確率は0じゃない!GKはとりあえずJ下部セレクション受けとこう!

セレクション会場の画像 Uncategorized

 ゴールキーパー(GK)の親たちよ、こんにちは。管理人のロンです。

 Jリーグ下部組織(J下部)のセレクションと聞いて、
「いや、あれはチームのスーパースターだけでしょ?ウチの子には関係ないよ」
「受けるだけムダ。お金と時間がもったいないだけ」
と思う方がいらっしゃるかもしれない。

今回、私が伝えたいことは以下の通りだ。

「GKであるなら、ぜひJ下部セレクションを受けるべき」
 ・その差18倍!受かればグンとプロに近づく
 ・一流コーチのGKレッスンを体験できる
 ・移籍じゃなく出世!現所属チームにとっても名誉でしかない

 今回もJ下部ジュニアユースのGKであるウチの次男が練習着に付けてきた人工芝を取る時間を使って、上記についてぼやいていこうと思う。

 あくまで8年間少年サッカーチームでコーチをしつつ長男・次男を育ててきた私の経験からくる個人的な考え方ではあるが、
J下部セレクションを受けるメリットを理解でき
「自分の子とは縁遠いもの」というイメージが払しょくされ
受験の際のあなたとあなたの子どもの不安が少しでも取り除くことができたら
嬉しい。

エリートだけの夢の舞台?いやいや、セレクションは誰でも受けられるから受けとこう!

人芝の付いた練習着たち
ロン
ロン

今日の対戦相手はこいつらだ。
パンツは人工芝が付いていないし、腰サポーターは瞬殺だが、
練習着上の裾とソックスに時間がかかるかな…

 そもそもJ下部とは何か?
最低限知っておいていただかないとこの記事がちんぷんかんぷんになってしまうので、念のため始めにお伝えしておこう。

 「アカデミー」と呼ばれる、Jリーグ所属のクラブが育成目線で運営している、小学生から高校生年代までのチームのことだ。
「スクール」を運営しているクラブもあり、ごっちゃになりやすいので以下の比較表で違いを確認してほしい。

スクールとアカデミーの比較表

 J下部セレクションというのは、上記のアカデミーへの入会を目指す選手たちが集まる選考会のことだ。
つまり、プロへの近道の入口である。

 そんなJ下部セレクションについて、冒頭でも触れたが、もしかしたらあなたは
「いやいや、うちの子なんて関係ないから」
と思っているかもしれない。
かくいう私もその一人だったから、その気持ちはとてもよく分かる。

 長男が小学4年生の時、同じチームのコーチ仲間から
「長男はJ下部のセレクション受けないんですか?」
と言われ、セレクションがあることを初めて知った。
だがウチの長男は当時チーム内でポイントゲッターではあったが1番上手いというわけでもなかった。
「いやいや受かるわけないし、そもそも受けられないでしょ」
その話を聞いていたコーチ歴20年の別のコーチから
「そんなことないよ。誰でも受けられるから、経験と思って受けた方がいいよ」
と言われ、驚いた記憶がある。

 セレクションはチームのスーパースターだけが受けられるのではなく、募集期間に該当する年次(早いと小学2年生から。主に小学3年生~5年生)であれば、
必要書類を揃え、受験料を払って(無料の場合もある)申し込みさえすれば誰でも受けられる

その時点で、申し込んでいない子たちと圧倒的な差ができる。
合格する確率が0ではなくなるのだ。

 ところで、将来プロサッカー選手にどれくらいの確率でなれるのか、皆さんはご存じだろうか?
ジュニア世代のサッカー少年・少女たちに将来の夢を聞くと
「プロサッカー選手になりたい」
と口々に言う。
純粋な子どもの夢を否定するつもりは全くないが、
その内のどれくらいの子が実際にプロになれる確率を把握しているだろうか?

 今回改めてAIと共に調べてみたところ
JFAに登録しているジュニアサッカー少年・少女全体の約0.3%
という結果だった。
つまり、プロになれるのは333人に1人
この数字は、真剣にプロを目指して日々練習している子には、伝えてあげた方がいい。
他の332人よりも上手くならなくてはならないのだ。
 一方で、
「オレ、将来プロになるんだ~」
と言いつつ、ポテチとコーラをお供に床でゴロゴロしながらゲームばかりやっているような子には、伏せておいてほしい。

 次にJ下部に受かった場合のプロになれる確率について。
こちらもAIと共に計算をしたところ
J下部ジュニア選手の約5.3%
という結果だった。
プロになれるのは19人に1人だ。
J下部ジュニアの子たちとそれ以外のサッカーキッズたちの差は、約18倍となる。
※上記の各確率の根拠については、この章の最後に別枠で記載する。

 もしかしたらこの数字を見て
「え?そんなものなの?」
と思う方もいるかもしれない。
選りすぐられた子たちが、一流のコーチ達からエリート教育を受けながら相当な時間をサッカーに捧げるのに、と。

 しかし、ぜひリアルに想像してほしい。
ざっくり1チームの1学年の平均人数を15~20人くらい(私の感覚値)とすると、そこから毎年1人プロが誕生するような計算となる。
チームメイトから1人プロが誕生すると言われたら、
「え?オレじゃね?」
と思う子も結構いるのではないだろうか?
333人に1人だとピンと来ないが、チームから1人と言われればリアルに想像できるだろう。

 サッカーキッズの夢のプロサッカー選手。その夢の舞台に立てる確率をグンと高めるJ下部の入口
5億円当てるためにはまず宝くじを買わなくてはいけないように、J下部に入るためには、まずはセレクションに申し込まなくてはいけない
この我が子の可能性を開いてあげられるのは、親であるあなただけだ。

 J下部の選手の集め方について、いくつか知っておくべき注意点があるのでお伝えしておこう。
 基本的に、J下部は無理に選手を集めようとはしないということだ。
J下部は選手の顔と名前がHP上にアップされているのですぐに分かるが、特に5年生以下の場合、その学年の人数が8人に満たなかったり、GKがいなかったりする。
これは、J下部はあくまで「プロを養成するために存在する」ため、基準に満たない選手を取る必要がないからだ。

 多くの町クラブは、どんなに選手の育成のことを前面に出していても、一方では経営・運営のことを考えなくてはならない。
会費を集めることが必要だし、たとえボランティアのチームだとしても、運営のための人手を集めたりする必要がある。
継続運営のためには会員を増やす・維持することが必須なのだ。
そのため、色々な大会に出て勝つことは、選手を集めるための一番のPR材料だと言える。
子どもたちが純粋に追い求める「勝利」だが、チームにとっては経営という側面が絡んでいるのだ。

 一方で、J下部アカデミーの運営費はトップチームを含む組織全体での育成費で賄う。もちろん、資金が潤沢な組織ばかりではないが、
一部の超名門クラブを除く多くの町クラブとは、予算の規模も確保の仕方も全く異なる。
会員を集めて会費や人手を集める必要がないので、試合での勝利を追い求めるよりも、選手の育成を優先する
だから、そこそこ上手い10人の選手より、1人でいいのでプロになれる可能性のあるダイヤの原石がほしいのだ。

 そして、そのような原石をどうやって獲得するかについて。
先ほどから伝えているセレクションはその一つの方法であることは間違いないのだが、実はJ下部への入口はセレクションだけではない。
むしろ、もう一方の入口の方が正規ルートとも言える。
スカウトである。
これはJ下部のスカウト担当の人が主要な大会などを回り、欲しいと思った選手に声を掛け、そのチームから引き抜く活動である。
たまに強豪の町クラブが強引にやってヒンシュクを買う場合があるが、J下部は本人だけでなくしっかりとそのチームの責任者とも話し、
みんなが納得して移籍ができるようにちゃんと整える。
トップチームのファンでいてくれる地元のサッカーチームからエース選手を引き抜くという行為に、大きなリスクが潜んでいることをちゃんと理解しているのだ。
そしてこのスカウトによって移籍してきた選手が、J下部の登録選手のほとんどを占めるのである。

 上記のことから、セレクションの合格者数はほとんどの場合で0~若干名である。
セレクションの受験生は、多い時には300人を超える。それでも、ダイヤの原石が見つからないときには合格者は0だ。
高い高いハードルである。

 そのため、セレクション受験に対し、我が子が嫌がっているならやめておくことをお勧めする
この後セレクションを受けるメリットを書いていくが、我が子がセレクション受験に対して前向きで、学ぶ姿勢があってこそ成り立つメリットだ。
先述の通り嫌々参加している子がまかり間違っても合格するような場ではないし、ピリついた雰囲気で行う場合がほとんどで、
セレクションやJ下部に対して怖いイメージやトラウマが残ってしまう恐れもある。
そのトップチームのファンだった場合、トップチームのことまで嫌いになってしまうかもしれない。
ファンでいられれば、たとえプロになれなかったとしても、そのチームのサッカーは人生に彩りを加え続けるだろう。
それがなくなるのは、その子の人生においてとてももったいないことだ。
受験に際してはしっかりと我が子と対話をし、本人がやる気になった上で臨もう

 ちなみに、先述のようにベテランコーチからセレクションの存在を聞いた私は、さっそく家に帰って受験者数などを色々調べたうえ、長男にあるJ下部のセレクション受験を勧めたのだが、
「今のチームが好きでやめたくないから受けない」
と長男は言った。
……こ、こいつ受かる気でおる!
長男の自信に畏怖した私は、早々にその場を立ち去ったのであった。
このスタンスは彼が6年生になるまで続いたため、長男は一度も受けたことがない。
次男が4年生になる4年後まで、私は実際のセレクションの雰囲気を知ることはできなかった。

【飛ばしてもOK!】上記のプロになれる確率の根拠及び計算式について

気にならない方は飛ばしてほしい。
興味がある方や、ご自身の感覚とだいぶ異なっていて「なんでなんで!?」となっている方のため、根拠を記載する。

ジュニアサッカー少年・少女がプロになれる確率 約0.3%について】
計算式:150/50000=0.003

■分母:サッカー小学生1学年の人数 ≒ 50,000人
JFAが公表している2024年度の第4種(小学生年代)の登録総数は274,774人。
これは6学年合計の人数であり1学年の人数は公表されていないため、6で割って45,796人。
ただし高学年になるにつれ人数が多くなる(私の感覚では5年生が一番多い)と考えられるので、多めに割り振って約50,000人と推計。
■分子:毎年プロになる人数 ≒ 150人
2024年度の
J1リーグでの新人選手加盟データ46人
J2リーグでの新人選手加盟データ77人
上記にJ3リーグ(全20クラブ)での新人を加えると、おおよそ150人ほどと推計。

J下部ジュニア選手がプロになれる確率 約5.3%について】
計算式:40/750=0.053

■分母:全国のJ下部ジュニアに所属している6年生の人数 ≒ 750人
J下部ジュニアチームの6年生の人数は約15人程度と推計。
また、Jリーグ全60クラブのうち、ジュニアアカデミーチームを保有・活動しているクラブ数は50クラブほど。
15人×50クラブ=750人と推計できる。
■分子:J下部ジュニア出身で最終的にプロになれる人数 ≒ 40人
1年間でプロ契約する選手は約150人。
ストレート組)J下部のユースから直接昇格するのは新人プロ150人のうち約45%=67人。その内ジュニアから一度もアカデミーを外れない生え抜き選手は約20人ほどと推計。
外部経由組)高校や大学の部活を経由してプロになる選手は新人プロ150人のうち約55%=83人。これにはJ下部ジュニアに所属していたがユースまで昇格できなかった選手も含まれており、その人数を約20人と推計。
ストレート組20人+外部経由組20人=40人と推計。

ワンチャンある!GKは圧倒的に少ない+緊張感の中で一流コーチからレッスン!

腰サポーターのビフォーアフター
ロン
ロン

腰サポーターはベランダでバサバサしたらあっという間に人工芝が落ちた。次ッ!

 私の次男はとあるJ下部のセレクションを4年生と5年生の時に1回ずつ、また別のJ下部のセレクションを5年生の時に1回受けた。
後者のクラブは和気あいあいとした雰囲気で行われたのだが、前者のJ下部は大勢の受験生がいて、緊張感が包む非常にピリついた雰囲気の中で行われていた。

 2つのクラブしか肉眼では見ていないので間違った認識があるかもしれないが、他のJ下部のセレクションを受けた子の親やコーチから聞いた情報などから察するに、
大体のJ下部セレクションはそのような緊張感の中で行われると思われる。

 いつもの仲間やコーチがいない環境に1人で飛び込む。そして周りはみんなライバル。
そんな緊張感のある場面、小学生が過ごす穏やかな日々の中では、他になかなかないだろう。
ドキドキするだろうし、寂しさも感じるかもしれない。いつもの実力が発揮できないということもあるだろう。
そんな中でサッカーをするだけで、非常にいい経験になる。

 また、セレクションはサッカースキルはもちろん、基本的身体能力、サッカーに臨む姿勢、メンタル、コミュニケーション能力などを見られる場ではあるが、
同時に一流のGK専門コーチからレッスンを受けられる場でもある

 メニューの中には当然GK特有の基本的なセービングやキックなどのメニューが含まれ、子どもたちにやらせて選考する一方で、指導もしてくれるのだ。
これは非常にいい機会となる。そもそもジュニアの場合、所属するチームにGK専門コーチなんていないことがほとんどだろう。
「え?GK専門のコーチなんているの?」
という方もいらっしゃると思う。それくらい、一般的なジュニアのチームではレアな存在だ。
それに対し、私の知る限り、J下部のコーチ達はほとんどがJ下部ユース以上の経験者であり、自身がずっとGK の専門的なレッスンを受けてきた方々。
元プロも多く、日本代表を経験した方もいる
そんな一流のコーチ達からGKの専門的なレッスンを受けられる機会など、そうはないだろう。

 また、GK特有のさらにラッキーな状況がある。
さきほど多いと300人超が受験すると伝えたが、それはフィールドプレイヤー(FP)の話であり、実はGKはぐっと少なくなるのだ。

 先述のように、セレクションでは色々な要素を見ている。当然、しっかり見てもらって可能性を感じてもらうことが重要となるが、
300人全員をしっかりと見て判断するというのは、コーチとしても至難の業だろう。

 一方、私の次男が受けたGKセレクションは1学年10人~20人程度。コーチがしっかりと一人一人を見ていた印象がある。
実際、次男が4年生の時に受けたセレクションでは、身長、キックの威力が飛び抜けた子がいて、その子は合格していた。
合格率は約20人中1人。FPとは合格率が大きく異なるのだ。

 なお、J下部は1学年につきGKは2名まで、多くても3名までであることが多いので注意してほしい。
これは推測にはなるが、GKはFPと違って試合に出ても疲労で交代するということがなく、ケガによる交代要員としてもう1人いれば十分だからだと思われる。
3名以上いても一人当たりの試合出場の機会が少なくなり、成長スピードが遅くなる。J下部としてはプロになる選手を育てることが最大の目的なので、
3名以上は必要ないのだ。
学年が低いほどGKの選手が不足していることが多いので、早めに受ければ合格率も高まると言える。

 J下部セレクションを受験するのには数千円かかることが多いが、それを差し引いたとしても、
ジュニアGKが受験することにはたくさんのメリットがあり、FPに比べて合格率も高いことが多い。
ぜひ受験を検討してみてほしい。

ワンチャンあった!GK合格のカギはキックの精度と8人目の意識

練習着上の掃除
ロン
ロン

次は練習着の上だ。やっぱり裾の縫い目に絡みついた人工芝はバサバサしても全く落ちず、
ガムテをくっつけても取れないので、爪。爪でも取れなきゃ指でつまんで取る。
この縫い目の部分メーカーさんなんとかしてくれないものかなぁ…

 ではここで合格した具体例を挙げよう。
ウチの次男である。
先述の通り私の次男は4年生、5年生ととあるJ下部のセレクションを受けたが、5年生に受けたセレクションで合格をいただくことができた。

 当時、次男はトレセンに選んでもらったばかりで、当然、J下部スカウト担当から声を掛けてもらった経験などない。
また当時、三角骨障害(足のカカトの後ろの骨を傷める)を患っており、テーピングをしてサッカーをしていたこともあり、
せっかくトレセンにも選んでもらえたし、全力も出せないのに受かるわけないし、ということで、
そのJ下部のセレクションの応募締切の朝まで、受けるつもりもなかった。
しかし、通勤の途中で次男本人に最終確認するのを忘れたことを思い出し、乗り換え駅のホームから電話したところまさかの「受けたい」との反応が。
「受けなくていいよ~!」と思うも出勤時間まで時間がなくやり取りを続けられなかったため、とりあえず申し込んだのだ。

 本人はどうだか知らないが、私としては完全に記念受験のつもりで臨んだセレクションの当日。
送迎で付き添ったものの見学禁止なので、どうしたものかと周りを見渡したところ、
少し離れたところに覗けてしまいそうな高台を発見し、こっそり見学することにした。

 たまたまなのか、去年+今年受けたもう一つのJ下部セレクションよりも、さらにぐっと受験者数が少ない。コーチもしっかり目が届く人数だ。
 セレクションの内容としては、身体能力を見るメニューとしては立幅飛びのみで、
意外にもダッシュやリフティングなどの基本的な能力は見られなかったことが印象に残っている。
その他はGKとしての基本的な所作を見るものがほとんどで、キャッチング、ローリングダウン(投げられたボールをキャッチしながら横に倒れる)、
ロングキック、パントキック(ジュニアだとジャンボキックとも言ったりする)というものに加え、
シュートゲーム(2人1組で片方がセービング、片方がシュートを撃つということを交代して繰り返す)
というものだった。
シュートゲームではたまたまペアになった相手が「最近サッカー始めたのかな?」と思わせるような子で、
次男が圧勝することは容易に想像できたが、一方でセレクションではコミュニケーション能力も見られるため、
次男が相手へのリスペクトを持ちながら実施できるかが非常に心配だった。
 遠くから見ていても、各メニューに対してコーチがしっかりと指導をしてくれているのが分かり、笑顔も混ざる和気あいあいとしたムードで行われていたのが印象的だった。

 セレクションが終わって次男を迎えに行くと、私を見つけた瞬間に次男が
「相手の子が下手だった。ボコボコにしてやった。受かったと思う」
と。
ああ、やっぱり落ちたか…

 合格者には決められた日まで(確か1週間後くらいだったと思う)にメールで連絡が来ることになっていた。
セレクション後、毎日毎日、何度も何度も「メール来た?」と次男が聞いてくる。
その度に「まだ来てない」と言うのだが、一方で「合格者にはすぐに連絡が来るもの」という噂を聞いたことがあったので
「めったに受かるものじゃないんだから、期待しちゃだめだよ」
と言い、連絡がないまま締切日を過ぎた際の次男の落胆を少しでも和らげるため、布石を打っておいた。
 締切当日に、二次セレクションの案内メールが来た。
まさか通ると思っていなかったので、とてもびっくりした。
が、すぐに基本的に3次セレクションまではあると説明を受けていたことを思い出した。
次男をぬか喜びさせてはならない。
しかし、吉報を悲報として伝えるのも良くない。具体的な声掛けは忘れてしまったが、慎重に言葉を選んで次男に伝えたのを覚えている。

 二次セレクションは平日に行われ、送迎は妻が行ったため、私は見ていない。次男から後から聞いた話である。
二次セレクションに進んだのは次男のみで、FPの現アカデミー生の練習に混ざる形式で行われたとのこと。
セレクション内容は
GKコーチとマンツーマンでのパスパスとロングキック・パントキック、リフティングを行い、FPの子たちに混ざってのゲームというものだったとのこと。

 私が帰宅して次男に聞くと、予想通り
「めちゃくちゃ楽しかった!受かったと思う!」
とのこと。
次男は相変わらず自信満々だが、基本的にJ下部になんて受かるわけがない。万が一 今回通っても、三次セレクションがある。
私はこの時点でも次男が合格するとは全く思っていなかったが、次男が楽しかったようなので、満足していた。

 二次セレクションの合否は電話がかかってくることになっていた。不合格でも決められた日までに電話がかかってくると。
この電話も、締切日ギリギリだった。
夕方に知らない番号から電話がかかってきたので出ると
「合格です。本人のサッカーの技術としては合格なので、保護者面談をさせてください」
とのことだった。
混乱した。
あると言われていた三次セレクションはないと言われ、聞いていなかった保護者面談の話を切り出されたので言葉に詰まっていると
「そんなに重たい内容じゃないですから!ウチの方針などを説明させてもらい、賛同いただけるかを確認させてもらうだけです」

 電話を切り、まだ信じられないまま
「サッカーの技術は合格で、あとは保護者面談だって」
と妻と次男に話すと、
「やったー!!!」
「三次セレクションすっ飛ばしたの!?すごいじゃない‼」
と次男も妻も大喜び。
その声で私も実感がわいてきて、一緒にひとしきり盛り上がった。
しかし、ふと
「本人は合格で残りは保護者面談ということは、これで不合格になったら私か妻のせい」
ということであることに気付き、気持ちがすーっと引いていった。
保護者としての責任の重さが、急にのしかかってきたのだ。

 保護者面談には、妻と二人で赴いた。
クラブ側は、ジュニアの監督と、FPコーチ、GKコーチの3人だった。
「緊張していただかなくて大丈夫ですから」
と改めて言ってくれた上で、アカデミーの組織や育成方針について説明をしてくれた上で質問を求められたため、
次男が受かった理由を聞いたところ、次男の合否を決めたGKコーチが答えてくれた。
「キックの精度と、ゲームでの動きに表れるサッカーIQです」
とのことだった。

 具体的にGKコーチからはキックのことについて
「パントキックをさせてみた際、珍しく低弾道パントキック(ボールに対して横から足を当てるキック)を蹴るんです。
そしてその蹴られたボールが、私が構えた手のところにピタッと飛んでくるんです。このレベルのキックをできる子は、ジュニアではなかなかいません」
とのこと。
ちょっとオタク気質がある次男は、YouTubeで得たキックの知識を、公園でずっと練習し、いつの間にか低弾道パントキックを蹴られるようになっていた。
これには私も驚いた。

 監督からはサッカーIQについて
「ウチは繋ぐことを重視したサッカーをしている。次男君は8人目の選手として、常にFPにしっかり関わるポジショニングをしている。サッカーのことをよく分かっている」
ということだった。
 これは私と次男が所属しているチームの方針が大きくかかわっている。
ゴールキックの際、他のチームはとにかくなるべく遠くへ蹴り飛ばす方針であることが多い中、ウチのチームは大きく蹴ることを禁止している。
これは
■相手のプレッシャーがある中、GKからボールを繋いでいった方がその都度 考えることに繋がり、サッカーIQ、技術が上がること
■大きく飛んできた、ポンポン跳ねているボールをしっかりマイボールとして納めるのは難しく、相手チームにトラップ際を狙われて取られてしまう可能性が高いこと
からだ。
同様の理由で考えのないクリア(タッチラインからボールを出したり、相手陣地に大きくボールを蹴ること)も禁止だ。
とはいえ弱小チームなので、この崇高な思想による禁止事項のおかげで失点することも多いのだが、結果的にこの方針が、本当に次男のサッカーIQを上げたのだ。
次男を育ててくれたチームとコーチ陣には本当に感謝している。

 次男の合格理由を聞いて気を良くしたことで緊張がほぐれ、20年という期間で身体にしみ込んだ本業のセールスとしてのクセがもろに出て、
その後の面談はコーチ達のウケを取りつつゲラゲラ笑いながら進めてしまい、はっと気づいたのはコーチ達に見送られた後だった。
横を見ると、妻の冷たい目。
……ヤバい。次男の夢に繋がる絶好のチャンスを、私が潰してしまったかもしれない。
そう思いながら家路についたのを覚えている。

 最終合否についてはある日の19時までに連絡が来ることになっていた。
私は自分のせいで次男が落ちたかもしれないという一抹の不安を感じつつも、コーチが「重い内容ではない」と言っていたことを信じ、
その日の夜はお祝いとして次男の好きな回転寿司に家族で行くことにしていた。
 夕方になり、ご多分に漏れず休日の回転寿司屋は大混雑。少し早めに向かったのだが、駐車場に入るのにもたっぷり待ち、席に座ることができたのは19時のちょっと前だった。

 ちなみにまだ連絡はない。
オーケーオーケー。想定通り。これまでの連絡は全てギリギリだった。
「ここまで来たら合格連絡を受けてからみんなで乾杯しよう」
週末の家族連れで賑わう回転寿司屋の店内で、我々家族の座った席のみ、何も頼まず、シーンとしたままの時間が続く。
ピロン♪
……違う。これはLINEの通知音だ。電話で来るのだ。短い音ではない。
ブブブ!
……妻のケータイのバイブ音だ。いつも音を消していて電話に気付いてくれない妻も、今日はバイブにしている。
私に電話が掛かってくることになっているだろうが。なんで今日に限って音を消してないんだ。
時折鳴るケータイの音にビクつきながら、電話着信を待って過ごす。

「かかってこないね…」
妻のその声でバッとケータイを見ると、19時になっていた。
掛かってきてない。ええ!?掛かってこないんだけど!
今日の連絡は必ず連絡が来ることになっている。たとえ不合格でも。
え?不合格だったの?不合格だから、連絡は後回しでもいいってこと?
私が困惑しているところで
「30分待ってみよう」
と正面の妻が言った。その少し後ろに、店員が不思議そうにこちらを見ているのが見えた。
そりゃそうだ。これだけ混雑している店内で、家族4人が何も食べずに黙って座っているのだ。
子どもたちもお腹がすかせている。
「とりあえず、何か頼んで食べ始めよう。前祝いだ」
といいつつ、お酒は頼まないでお茶を入れる。電話が掛かってくるんだから。

 30分経ってしまった。
えええ!?どういうこと!?軽く次男の人生が掛かっていると思うんだが!?
目の前では苦笑いする妻と、そわそわしつつも大好きなお寿司をバクバク食べる次男。全然意に介していない長男。
私と妻は動揺であまり箸が進まない。お茶ばっかり飲んでしまう。
「こっちから電話掛けようか」
「いや、いいよ。きっと忙しいんだよ。最初からうるさい親だと思われちゃったら嫌だよ」
「そうか。もう30分待ってみるか…」

 食べ終わってしまった。
えええええ!?なんでなんで!?こんな大事なことがこんなに後回しにされるの!?
さすがに我慢ができなくなってきた。
「電話掛けよう」
「お会計してお店出てからにしよ」
会計を済ませて店を出る。お祝いと思って寿司屋に来たのに、合否がはっきりわからないまま帰ることになるとは。
 今まで連絡を掛けてきてくれた人は必ず1人のFPコーチだったので、その着信履歴から電話を掛ける。
プルルルル…プルルルル…
繋がらない。
19時までに連絡すると言われていたのに対し、すでに20時。
架空の団体が仕掛けた壮大なドッキリだったのだろうか?想定外の事態にあり得ないことを考え出してしまう。
「待っていても仕方ないから、帰りだしましょ。車に乗ろう」

 車で走り出して数分したところでケータイが鳴った。コーチからだ。
「遅くなってすみません。次男君は合格です…」
合格連絡は嬉しかった。もちろん嬉しかったのだが、その嬉しさよりも、私の頭の中は
「なぜこんなに連絡が遅かったのか」
という思いでいっぱい。
電話先でコーチから今後のこと等 いろいろ話をされたのだが、
それでそれで?ねえ理由は?
という思いが溢れてしまい、内容が上手く入ってこない。
「では今後ともよろしくお願いいたします」
……え?電話終わった?
「理由ないんかーーーーーい!!」
妻が私が事態を飲み込むよりも先に叫び、驚いて事故りそうになった。

……長くなってしまった。
上記のように、万全の調子でもなく記念受験のはずだったセレクションは、まさかの合格となったのだ。
先述の合格連絡の例のように、その後もクラブの連絡などの事務手続きには色々と思うことはあるのだが、
それを差し引いたとしても、日頃の練習内容や遠征での体験などは、とんでもなくありがたい待遇を受けさせてもらっている。

ワンチャンあるのだ。
次男にはキックとサッカーIQという強みがあったが、J下部に通用するレベルだとは全然思っていなかった。
皆さんの我が子にも、強みはあるはずだ。あなたが通用しないと思っているだけかもしれない。
ぜひそれを磨き、J下部のセレクションにチャレンジしてほしい。

チームに迷惑かける?でもクラブにとってもとても名誉なこと!

ソックス掃除
ロン
ロン

いよいよ最後のソックスだ。上側は裏までこびり付くので、裏返して取る。ソックスにはしっかり絡みつくので、爪で寄せて取り、最後は指でつまんで取るしかない。

 ここまで今回の記事を読んで、セレクションを受けてみようかと思っても、
「今のチームにとてもお世話になっているのに、ウチの子が抜けたら迷惑かけちゃうな」
と思って気が進まない方がいらっしゃるだろう。
 あなたのその紳士的で優しい考え方は、全くその通りだ。
セレクションに合格する子は、間違いなくそのチームのエースのはずだ。その子が引き抜かれることになるのだから、
そのチームの戦力の低下は間違いないだろう。
試合に勝ちづらくなるだろうし、メンバー構成やポジション配置に苦慮することになるかもしれない。
チームの仲間やコーチからしたら、その点に関しては迷惑でしかない。

 しかし、ぜひ安心してほしい。
特定のJ下部をライバル視しているようなよほどの強豪チームは分からないが、
一般的な町クラブにおいては
「J下部への移籍だけは別」
という共通認識がある。

 元々チーム間の移籍は多少はあるはずだ。
一般的な移籍は、もっと学べる・勝てるチームに行きたいという上昇志向からの場合や、
コーチやチームの方針と合わなかったり、揉め事があったりという悲しい理由の場合など、理由は様々だが、
少なからずチームへの不満があって行われるそれらの移籍は「裏切り行為」と見られてしまうことがある。
移籍する選手側にもチーム側にも双方に要因があるので、残されたチーム側が一方的にそのように見ることは決して良いことではない。
しかし、私が付き合っているようなコーチ達は、日頃から選手たちに対し並々ならぬ思いを持って指導に当たっている(特にボランティアでやっているヘッドコーチ等)。
大人として露骨に口に出すことはないとしても、どうしても「ちぇっ」ぐらいは思ってしまうだろう。

しかし、J下部だけは違う。
自分の夢に向かって本気でチャレンジし、掴み取ったものに他ならない。
チームへの不満や後ろむきな理由は一点もない、本人が望んだ完全に前向きなもの。
移籍でははく「出世」である。

 またコーチ達はその考え方を、D級コーチライセンスの講習にて体系だって学んでもいる。
JFA(日本サッカー協会)が主催するその講習では、日本のサッカーレベルを上げるためには
「個を育てること」と、そのための土台となる「グラスルーツでのサッカー」が重要であると説かれている。
つまり、日本代表選手になるようなエリートは、町クラブのような一般的なチームが広くサッカーを普及させることで初めて排出されるということだ。
町クラブからJ下部への移籍は、まさにこのことの体現と言える。

 また、もしJ下部へ「出世」したその子が実際にプロになったり、日本代表にまでなったりしたらどうだろう?
 「さぎぬまSC」という神奈川県の町クラブの例を挙げる。
1979年創立と歴史のある強豪チームではあるものの、いつも全国大会に出場するようないわゆる超強豪チームではない。
しかし、「三苫 薫」「田中 碧」「権田 修一」が日本代表に選出された時、ジュニア時代の一時をさぎぬまSCで学んだことが報道され、一躍 有名になった。
それまで特別多くもない会員数のさぎぬまSCだったが、日本代表を輩出した教えを受けたいと、70人以上もの入団希望者が訪れたというのだ(噂レベルなので数字は定かではない)。
 それはそれでチームとしては迷惑だったのかもしれないが、名誉であることは間違いない。
また先述の通り、町クラブは運営のために会員を集める必要がある。
さぎぬまSCが運営に困ったという話は聞いたことがないが、より運営が安定したことは間違いない。

 上記は極端な例ではあるが、J下部へ選手を輩出したことは、チームにとって大変名誉なことであり、その子の出世の仕方次第では、ものすごい可能性を秘めた事柄である。
実際、ウチの次男はチームからかなり祝福された。
送別会を開いてくれ、
「いつでもまた顔出してね!」
と言いながら、保護者の方々が中心となって作ってくれた思い出写真とメッセージの詰まったアルバムを渡してくれた。
 実際に移籍後もチームのイベントにちょこちょこ顔を出し、6年生として最後の卒団試合にも、コーチ側のGKとして参加させてもらったのだ。

 J下部への移籍は「出世」だ。
そのことをチームやコーチも理解していて、チームにとっては大変な名誉である。
ぜひ後ろめたく思うことなく、セレクションを受験を検討してほしい。

GKの親はとりあえずJ下部セレクションの情報を集めよう!

掃除後の練習着たち
ロン
ロン

終わった…
今日はそこまでの強敵ではなかったな。さぁ、洗濯機に突っ込もう。
そして50分後に干すのだ!がんばれオレ!あとひと踏ん張りがんばれ!

 ここまで読んでいただき、少しでもセレクションを受けてみようかと思っていただけたなら、ぜひインターネットなどで情報を集めてみよう。

 もし我が子のお気に入りチームがあるなら、当然、真っ先にそのチームのHPを見るべきだ。
セレクションを受ければ、試合では見えてこない裏舞台を除くような感覚を味わえ、より好きになれる可能性が高いためである。
セレクション会場は基本的に整備された人工芝であり、実際の選手の練習場とは違ったとしても、どれだけいい環境で選手たちがサッカーをやっているかが分かる。
また受験者数の多さを見ればどれくらい地域に愛されているかが分かるだろうし、コーチ達の表情や振る舞いからは日頃のチーム内の雰囲気を感じることもできるだろう。
それだけで、ファンからしたら嬉しいものだ。

 その年のセレクションはだいたい7月くらいから情報がアップされ、8月~10月頃に一次セレクションを受けるというスケジュールが一般的だ。
まれに年に複数回行っていたり、欠員が出た場合の補充のために臨時で行っていることもあるので、ちょこちょこHPを訪れるといい。
他のJ下部と時期がずれるセレクションは、受験者が少ないことが多いので見つけたらラッキーだ。

 セレクションの募集情報を見つけたら、さっそく申し込みをしよう。
なお、大体の場合で申し込み及び受験料の支払いだけでは終わらず、期日まで(だいたいはセレクション当日持参)に承諾書の提出が必要となるので注意。
これには「現在所属しているチームの代表者に、J下部への移籍の承諾を先にもらっておく」という意味がある。
セレクションは「合格した場合には必ず移籍をする」のが規定となっているためだ。
J下部コーチ側の立場としては、多いときは300人以上にもなる中からやっと1名のダイヤの原石を見つけたのに
「ウチからエースを引き抜きやがって!」
と恨みを買うわけにはいかないからだ。
J下部アカデミーの評判はトップチームの評判に直結する。地域に愛されなくてはならない。
なので、事前に移籍の承諾をもらった選手だけが、セレクションを受けられるようになっているのだ。
承諾書にはチーム代表者のサインや押印が必要となっている。
代表者としょっちゅう会っている人ばかりではないと思うので、期日に間に合うよう、計画的に入手しよう。
 募集時期ではない場合は、去年の情報を見てみよう。
募集時期は毎年大体同じ。いつ頃に募集が始まるかが分かるだろう。
他にも必要な書類などを確認したり、他のサイトを見て受験者数や合格者数を調べ(公表されていないことが多いが)、心づもりをしておこう。

 「どこでもいいからJ下部受けてみたい」
という場合、「Green Cardニュース(旧 ジュニアサッカーニュース)」というサイトが便利だ。
各県のタブからセレクションの情報に行くことができ、地域のセレクション情報が網羅されている。町クラブのセレクション情報もたくさんあったり、
セレクション情報以外にも各種大会の情報もたくさんあるので、ちょこちょこ見ていると地域のサッカー事情に詳しくなれるだろう。


 「ピーピーピー」
ふう。洗濯機が終わったようだ。そろそろ今回はおしまいにしよう。
最後に、皆さんに伝えたいことがある。
ここまでこの記事を読んで、
「よし!ウチの子もJ下部に入れるぞ!」
と気持ちが高ぶってしまったとしたら大変申し訳ないのだが、ぜひ深呼吸して落ち着いてほしい。
間違っても我が子に
「〇〇なら絶対受かるから!絶対受かってきな!」
などと言ってプレッシャーを掛けないように。
落ちる可能性の方が圧倒的に高いし、そもそも一人も合格しない場合もあるのだ。
シリアスな空気で一流コーチからレッスンを受けられる機会だと思って、気軽に受けさせてあげてほしい。

 だが、もし、セレクションで落ちて我が子が落ち込んでしまったら。
それは本気だったということだ。本気でプロを目指しているということだ。
そうなれば、あなたの出番だ。
手を握って励ましてあげてほしい。

 まだ我が子がよちよち歩きだった頃を思い出しながら、
プロサッカー選手への厳しい道を歩き出した我が子を、不安半分、でも期待も込めた目で見つめながら、
我が子の行きたい方へ、手を取りながら一緒に向かってあげてほしい。
だって、その手を握り返さなくなる日は、そう遠くはない。
あなたにとっても我が子と密に過ごす最高の日々になるはずだ。

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